恋愛&小説のブログ

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小さな握りこぶし46

キリンの檻は


入口からいちばん遠い場所にあった


前回来た時は


その手前の象の檻で


時間になるまで居座ったので


キリンの檻までは行かなかった


彼はキリンを見たことが


無いらしいという事を


帰りの車内で話すものだから


罪悪感に襲われた


次回はキリンを見ようと


約束したのはその為だった


というのも


不思議な事に


彼の住む雪国には


動物園が無いらしい


幼い頃から


身近だった動物園が


無い場所があることに


違和感を覚えた


その日は夕方で少し肌寒かった


閉園間際の園内にしては


家族連れやカップルが


それなりに居た


しかし、ほとんどの動物が


野外から屋内へ移っていた


キリンの檻に行く途中で


チンパンジーの檻があった


1匹の黒いチンパンジーが


丸太を組んで作った遊具の上で


大の字になり空を仰いでいた


自然の中で無防備なその姿が


とても気持ち良さそうで


「あー、わたしも


大の字になって寝たい!」


と口にしていた


「あはは、そうだね」


彼は相変わらず


ちょっとハニカミながら笑った


さあ、もうすぐキリンの檻だ


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし45

ということで急遽


動物園へいくことに


調べてみると閉園が


午後4時30分


15時過ぎについたとして


1時間ちょっとは見て回れる


「しっかし元気だね


とても8時間運転してきたとは


思えないよ」


本当にサイボーグか?


「あはは」


まあ、本人が良いのなら


良いのだ


動物園に着くと


まだまだ入園者がいた


入場チケットを買おうと


彼に貰った革財布を取り出すと


「え、今回も俺払えないの?」


いや、来てもらってる身だしね


「良いよー」


彼は不満そうだ


「ジャンケンする?」


ジャンケンと、きたか


たいていジャンケンは


言い出しっぺが負けると


相場が決まっているのだ


「良いよ?」


半分くらい勝ちを確信して


掛け声を2人でかける


最初はグー


ジャンケンー


「ポン!」


彼はチョキ


わたしはグー


ね?言った通り


「じゃあ、わたし払うね」


今どきジャンケンで


入園料を払う側を決めるとか


ちょっとおかしかったけど


嫌いじゃなかった


さあ、キリン目指して


レッツゴー!


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし44

久々の再会


お互いにぎこち無く


交わす言葉を選んでいた


「なにか飲む?」


「あ、うん


じゃあいただきます」


お茶を入れていると


「今日はどうする?」


と彼が尋ねる


「うん?特に何もしないよ?」


「ふーん」


いや、だって


長時間運転で疲れてるでしょう?


「疲れてると思うから


布団敷いてあるし


寝てくれて良いよ」


彼への気遣いのつもりだったが


返答は意外なものだった


「うーん


眠れないかな?テンション上がってて」


え、どんだけ元気よ(笑)


「そうなんだ」


「うん、動物園いかない?」


そして、まさかの動物園


まぁ、前回は


お目当てのキリンを見ずして帰ったので


次回はキリンと決めてはいたが


「良いけど、大丈夫?」


「うん、大丈夫


じゃあ行こうか」


たぶん後でいつものように


なるのだろうと予測


この予測は後に現実になる(笑)


小さな握りこぶし