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小さな握りこぶし46

キリンの檻は


入口からいちばん遠い場所にあった


前回来た時は


その手前の象の檻で


時間になるまで居座ったので


キリンの檻までは行かなかった


彼はキリンを見たことが


無いらしいという事を


帰りの車内で話すものだから


罪悪感に襲われた


次回はキリンを見ようと


約束したのはその為だった


というのも


不思議な事に


彼の住む雪国には


動物園が無いらしい


幼い頃から


身近だった動物園が


無い場所があることに


違和感を覚えた


その日は夕方で少し肌寒かった


閉園間際の園内にしては


家族連れやカップルが


それなりに居た


しかし、ほとんどの動物が


野外から屋内へ移っていた


キリンの檻に行く途中で


チンパンジーの檻があった


1匹の黒いチンパンジーが


丸太を組んで作った遊具の上で


大の字になり空を仰いでいた


自然の中で無防備なその姿が


とても気持ち良さそうで


「あー、わたしも


大の字になって寝たい!」


と口にしていた


「あはは、そうだね」


彼は相変わらず


ちょっとハニカミながら笑った


さあ、もうすぐキリンの檻だ


小さな握りこぶし

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