恋愛&小説のブログ

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小さな握りこぶし5-3

…というわけで


彼に秘密にしている事


今夜打ち明けるぞ!


仕事が終わって


彼に電話をかけようと


画面に名前を表示する


うわーなんて言おう


取り敢えず


昨日のこと言ってくれて


ありがとう言って


それから


私も打ち明けることがある


って言って


それからそれから


わーーー


もう変な事言いそう


紙に書くか


全く情けない


興奮すると自分でも


収集がつかない


よし


言いたいことは


まとまった


あとは紙を見て


普通に話すだけ


ダイヤルしなきゃ




わーー


緊張するどうしよう


マジ心臓バクバクしてる


このまま言わずに寝ちゃう?


いやいや!


逃げるなんて卑怯だ


なるようになれっ


プルルル


プルルル



あれ?出ない


プルルル


プ…ガチャ


「はい、もしもし」


でた


「あ、もしもし


今だいじょうぶ?」


「あ、ああ


だいじょうぶ


どうしたの?」


やばーい


なんで彼も緊張してるのー


ますます緊張するじゃん


頭が沸騰してきた


「えっとね


…今日の除雪上手くいった?」


「あ、うん


早く行ったけど


俺より早い人がいて


全部はやれなかった


でも、三倍くらい頑張った」


「そっか


ご苦労さまでした」


「うん、ありがとう」


ふう


一息ついて続ける


「実はね、お礼が言いたくて


電話したの」


「ん?うん」


「昨日さ、サボったこと


言ってくれたじゃない?」


「うん」


「人って自分のいい所は見せるけど


悪いところは見せたがらないから


言ってくれて


嬉しかった」


「あ、ああ」


「だから隠さず言ってくれて


ありがとう」


ふう


第一関門クリア


「そうか


でも、俺


君に隠し事は出来そうにないよ」


たしかに丸わかり


「そうだね


すぐ分かっちゃいそう」


あはは


ふたりで笑った


笑いながら


次の話題のことを考えると


またドキドキしてきた


よし、いくぞ


「それでね」


がんばれ、わたし


「別に隠してたわけじゃないんだけど


私も言っておくことがあって」


「あ、ああ」


「わたし今まで


その…彼氏いた事なくて


もちろん体の関係もなくて」


彼は何も言わない


「だから


もしあなたと今後


そういう事になるとしたら」


ふう、だいじょうぶ


ちゃんと言えてる


「あなたが私と子供と


一緒に生きる覚悟ができたって


受け取るから


…それは覚えておいて欲しいの」


彼が口を開く


「あ、はい


分かりました」


そして


一番の難所


「それでね」


「うん」


「セックスって体のコミュニケーションらしくてお互い気持ち良くするのが大事なんだってだから今その勉強というか知るためにBL見たりしてます」


間髪入れずに言い切った


マシンガントーク並だ


カンペ無かったら


こんな完璧に言えてない


達成感半端ない


沈黙が流れる


「…えっと…」


なんかどうしたらいいの


この空気


「俺


そっちの方は詳しくなくて…」


「んと


失敗打ち明けてくれたから


私もそれに応えたくて


それに内緒でひとり


悶々としてるのも嫌だし…」


なに悶々って…(笑)


「そうか


でも、そういう情報は


要らなかったかも…(笑)」


ですよねー


やらかしました


「そ、そっか


まぁ、伝えたかったのは


覚悟してるって事と


ありがとうって事」


やっと落ち着いた


「うん、わかった


ありがとう」


ふふふ


なんかやっぱ可愛い


「そういえば


次の3連休空いてる?


ちょっとドライブがてら


車で行こうと思うんだけど」


いきなり切り出される


「次の三連休か


バッチリ仕事で忙しいなぁ


繁忙期だし」


「そっか


連休取れるのが


そこくらいしか無いんだけど」


「うーん


ごめんね」


「ううん」


「じゃあ、今日は聞いてくれて


ありがとう!


おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


恥ずかしいことを知られた事


自分が言い切った満足感に


頭が真っ白だったわたしは


とんでもない事をしたことに


この時はまだ


気づいていなかった


取り敢えず


頑張ったわたしに


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし5-2

「ポテトのLひとつと


コーヒーMひとつ


あと紅茶Sホットストレートで」


店内は私たち以外に


家族連れが1組


プレートを受け取り


席に着いた


まだ冬真っ只中で


ガラスが曇っていた


彼女は前の彼と別れてから


死んだようにやつれていた


詳細は聞けなかったが


どうやら長い間暴力を


受けていたらしかった


そんな彼女が趣味を見つけ


「気になる人が出来たんだ」


去年話してくれたとき


いい感じになってほしいと


願っていた私は


彼氏が出来たと聞いた時


心からよかったと思った


彼女が口を開く


「ねぇ、子供欲しい?」


「うん、欲しい


やっぱり子供は可愛いもん」


わたしは講師とい職業柄


子供と触れ合う機会が


多かった


子供にはいつも驚かされる


学ばされることが


たくさんあった


「子供作るには


エッチしないといけないよ?」


唐突すぎる


「あ、う、うん」


真剣に言われると


想像してしまって


かえって恥ずかしい


だってキスすら


マトモにできてないのに


「エッチするんだったら


キスなんかでつまづいてちゃダメ」


手厳しい


「そ、そうなんだけど…


でも、恥ずかしいもん


顔が目の前にあるんだよ


近すぎてマトモに見れない」


あのとき


後部座席で彼に別れ際


「じゃあキス…しよっか


…大丈夫?」


って言われた時も


「ちょ、ちょっと待って


落ち着くから」


胸の鼓動が収まらなかった


「無理だったら、無理って


言ってくれていいから」


彼だって恥ずかしいし


緊張してるだろうに


そんな勇気見せられたら


応えないわけに


いかないじゃん


「ううん、だいじょうぶ」


少し落ち着いて


彼に向き直る


正面から見ると


恥ずかしくて


目を閉じた


ふたりの距離が


近づいていくのがわかる


「ん…」


私の唇が触れた先は


彼の口端だった


「ごめん…


ズレちゃった…」


申し訳なさそうに言う彼


「ううん、いいの」


わたしだってまだまだだ


これが初キスだった


この状態でえっちの話なんざ


九九習って


高校受験するようなもんだ


開きなおってしまう


「そこは


頑張りなさいよ」


怒られた


「現実的に見て


お互い良い歳だし


彼の方はタネが枯れ始める


年齢に近いじゃない?」


はぁ、タネって


枯渇するんですか…?


そんなことも知らない


「ってことは、よ?


1回でできる確率が


どんどん下がるってこと」


なるほど数が少ないから、ね


「何回もやるつもりで居なきゃ


子供なんて夢のまた夢」


そ、そうなのかー


「えっちって


その…入れるだけで良いんでしょ?」


私の知識といえば


小学校の保健レベル


「えっちはね


体のコミュニケーションなの


だからただ


やればいいってもんでもない」


コミュニケーションとは


初耳です


「お互いを思いやって


気持ちいいところを


探して行くの


体のコミュニケーション」


でも、結局は


入れるわけですよね?


「そこに至るまでの過程も


ふたりで楽しむんだよ


そうすれば入れる時も


痛くない」


具体的すぎてわからない


「うちの彼は


自分で言うのもなんだけど


めっちゃ上手い


前の彼とはイッたこと無いけど


今の彼は毎回イカされる」


イクっていうと…?


「やっぱ歳下は良いよ♡


可愛い顔してどSだし


わたしMだから尚更だし


なんといっても体力が違いすぎる」


元気ってことですね


自分の知らない世界


今まで


興味を持たないように


してきた世界


彼女の話を聞いて


いろいろ知りたくなった


「とにかく


まずは恥ずかしがらずに


キス出来るようになさい


随時報告待ってるよ」


「え、報告するの!?」


ファストフードで


なんちゅう話をしているんだ


お客が少ないのが


せめてもの救いだった


まぁ、でも


「ありがとう


気にしてくれて


がんばるよ」


彼女と別れて


自分の部屋に戻った


体のコミュニケーションかぁ


おとこの人って


どういう事されたら


気持ちよく感じるんだろう


携帯で検索してみる


マスターベーションとか


文字で説明されても


よく分からなかった


ふとフリー広告欄を見ると


BLのマンガ告知があった


何の気なしに


開いてみる


出てきたのは


可愛らしい男の子と


イケメンの上司


それに働く社員も


皆粒ぞろいだった


読んでいくと


可愛い男の子が


イケメン上司に


押し倒された


ぽー


ここからはちょっと


描写できないけど


恥ずかしくて…


すっごくえっちい


マンガなのに


すっごくリアル


でも


ふたりとも嬉しそうだった


コレをするのか


よくバナナを想像しろというが


小さい頃よく見た父親のものは


バナナとは似ても似つかなかった


美味しそうじゃないし


白くないし


彼のはどんな感じなんだろう


なんだか


すっごくイヤらしい


でもきっと


可愛いんだろうな


なんてひとりでニヤニヤ


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし5-1

「おはよう」


毎朝日課のあいさつ


わたしの方が早い


ふたりの距離を


なるべく感じないように


彼に告白された日から


わたしが送り始めた


めんどくさいって


思う人もいるかもしれない


でも、やってみないと


分からない


何よりわたしは


彼を近くに感じていたかった


「おはよう」


いつもなら10分ほどで


そう返ってくるはずだった


今日はいつまで経っても


メッセージが来ない


寝坊かな


30分ほど遅れて


「おはよう


除雪サボっちゃった」


雪国に住む彼は


仕事がなくても


職場の除雪作業を


することになっていた


「うん、それで


あなたはどうするつもり?」


社会人として人として


彼がどう行動するか


知りたかった


もっとも


メッセージにテヘペロなんて


子供じみたことが添えてあれば


その時点で価値観の違いが


明白になっていて


返信すらしなかったが


彼のメールは至って真剣だった


私なら手土産の一つでも持って


翌朝一番に職場へ行き


全員に謝罪して回るだろうな


「明日朝一で職場行って


みんなの二倍働きます!」


わたしはお菓子で


許してもらおうと考えた


自分の浅はかさが


恥ずかしくなった


仕事の失敗は仕事で返す


かっこいいなぁ、もう


こういう時に


彼が年上であったことを


改めて実感して


人として凄いなと


素直に尊敬するのであった


「うん、良いと思う


ただ、どうせやるなら


二倍なんてケチい事は言わずに


みんなの仕事取るつもりで


行ってらっしゃい」


わたしは中途半端が嫌い


何事もやるなら全力で


やりきる方がいい


わたしも真剣に答える


「はい、了解です!」


なんだか偉そうに言ってしまった


彼は純粋で幼げで


見ていてハラハラさせられる


母性本能というものだろうか


父親譲りの心配性で


放っておけない


仕事の間


言い過ぎたかなぁ


嫌な思いさせたかな


でも、仕事はきっちりしてないと


やっぱり嫌だしな


ずっと一人反省会をしていた


感情的になりやすく


言いすぎてしまったり


やり過ぎてしまう気がある


そう感じた時はいつも


一人反省会をするのだ


特に嫌われたくない相手には


とことん反省会をする


仕事をしながらも


頭の中は彼への気持ちで


いっぱいだった


翌朝


「おはよう」


いつものように


わたしから


数分後彼から


「おはよう


今から除雪行ってきます!」


今日は起きれたらしい


色んなことにホッとした


筈なのに


「行ってらっしゃい」


彼を送り出したあとも


なぜかモヤモヤしていた


なんだろう


仕事をしながらも


まだ不透明な何かが


頭の中に引っかかっていた


そもそも彼は何で


サボったことを私に言ったんだろう


私なら


カップルになりたてで


自分のマイナス面を


相手に打ち明けようとは


思わない


まだ知り合って間もないし


いい面を見せて


相手に自分をもっと好きに


なってもらおうとする


好きになってもらうには


いい面を見せるのが一番だ


もし私が逆の立場で


失敗を打ち明けるとしたら


それはとても勇気のいることだ


相手に幻滅されるかもしれない


嫌われるかもしれない


そんな不安が


彼には無かったというのだろうか


それとも


打ち明けても


私は幻滅しないという


確固たる自信があったのだろうか


分からない


わからないけど


ひとつ言えることは


ありがとうって言わなきゃ


失敗を隠さず


有耶無耶にせず


私にありのままの彼を


見せてくれたことに


ありがとうって


何を隠していた訳でもないが


彼の誠意にわたしも


応えようと決意した


今のわたしにとって


一番恥ずかしいと思うことは


純血であることと


もうひとつ


BLでえっちい勉強を


しているということだった


BLというのは


男性同士のえっちい情事ですが


もともと興味があった訳では無い


遡ること一週間前


彼氏が出来た報告をするため


数少ない心友ふたりと


持ち寄りランチをした


一人は看護師で2児の母


もう一人はクライミング好きの


年下彼氏を持つ教師


二人とも中学時代からの


付き合いだ


年末はよく集まるが


普段から連絡を密にしている


という訳では無い


その距離感がお互い


めんどくさくなく


長く付き合える理由でもあった


「おめでとう!


良かったねぇ」


「ありがとう!」


色々なことを話した


初めてのキスは


彼の車の後部座席で


お互い緊張のあまり


唇が重ならず


ニアミスしたこと


何とか休みを作って


行き来していること


その道を知り尽くす


彼女たちにしてみれば


初々しい事この上ない話


ばかりだったらしい


時間が経つのは早いもので


旦那が帰宅したため


パーティはお開きになった


「ねぇ、まだ時間ある?」


帰り道、彼女が尋ねてくる


「うん


大丈夫だよ」


「よし


じゃあカフェ行こう」


彼女とふたりカフェは


実は初めてだった


時間帯が遅かったので


結局ファストフードになった


なんだろう


たぶんお喋りしたいって訳じゃ


無いんだろうな


なにか大事な話なのだろう


よし


せっかく時間作ってくれたんだ


どんな事でも受け止めたる


どーんと、こい!


小さな握りこぶし