恋愛&小説のブログ

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小さな握りこぶし6

しばらくして


バイブが鳴る


「全然気にしてないから


だいじょうぶ!


それより忙しい時期に


会いに行きたいって言ったこと


反省してた


俺も楽しみにしてます


雪持っていこうか?(笑)」


キュン


心臓つかまれた


なんで


なんでそんなに


優しいの


わたしダメなとこばっかりなのに


なんで


「あなたが反省する事なんて


何もないよ


わたしが悪いんだから


雪嬉しい♪


でも、持ってくるの大変だし


その気持ちだけで嬉しいよ


ありがとう」


結局このあと


マジで雪持ってきて


玄関先に雪だるま


作ってくれたっけか


正直かなり驚いた


発泡スチロールに


いっぱい雪詰め込んで


大人の常識では


考えられない純粋さ


それを自然に持ってる彼に


ハラハラ、ドキドキ


させられるんだ


こんなに私の感情を


掻き乱していることに


当の本人は気づいていない


なんか私だけ


弄ばれてるようで


納得いかないって思う時もある


でも


好きなんだよなぁ


なんて


昔のことを思い出しながら


彼を想う今日この頃


女の子の日が始まった私は


いつも以上に


イヤらしいことを


考えている


女の子の期間になると


胸が張って


ちょっとした事でも


感じやすくなるようで


今まで性に無頓着だった私は


彼が出来てから


エッチいことを考える回数が


増えていた


最近はBLだけじゃなくて


男女の情事でも勉強するようになった


やっぱりこっちの方が


男女のあれこれはわかり易い


BLで役立つのは


男性に対するアプローチの仕方で


男女の方は


えっちの手順がわかる


わたしはひよっこなので


初心者向けからスタート


ただいま、バナナを妄想中


もちろん彼のバナナ


実際に見たことないから


大きさとか形とか


想像するしかない


彼のものに


そっと中指を添わせる


下から上へ


その形をなぞるように


愛撫する


見る見る元気になると


マジマジと彼のものを


見つめた


彼は恥ずかしそうに


頬を赤らめる


かわいい


両手でそっと彼のものに触れる


「…んっ…」


彼の声が漏れる


傷付けないように優しく


手と指を上下に滑らせる


「…はあはあ」


彼の息づかいが荒くなる


「気持ちいい?」


「…うん」


快楽で支配しているような


不思議な感覚


彼のものが大きくなった


わたしは両手を下げ


そっと唇を当てた


ビクンっ


彼が反応する


舌先を這わせる


最初は付け根から


徐々に先端へ這わせながら


唾液を絡めていく


「はぅっ…はあはあ」


どんな顔でその声出してるんだろう


暗くて見えない


舌を先端まで這わせると


少しずつ彼のものを


口の中に含む


全体に行き渡った唾液のおかげで


しゃぶりやすくなっていた


舌と口を使って


彼のものを上下に優しく


激しく愛撫する


「ああっ…はあ…はあ…」


感じているようだ



…って


妄想でここまで出来るとは


女の子の日恐るべし


あー恥ずかしい


すっごくえっちい事


考えてたのね、わたし


ひとりだから


まだ良いものの


彼と暮らすようになったら


わたし…襲っちゃいそう


純潔なわたしは


未知なる性の世界を経験したくて


むずむずしていた


絶対に彼に知られたら


引かれるだろうな


でも妄想するくらいなら…


…少しくらい、いいよね?


次は…


私の番


彼に触れてもらいたい


妄想スタート


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし5-5

迷わずリダイヤルする


プルルル


プルルル


…あれ、出ない


プルルル


プルルル


…もしかして寝ちゃったのかな


それとも


誤解されたまま


嫌われちゃったのかな


…お願い



電話に出てくださいっ!


…ガチャ


「もしもし」


わー神さま仏さまーー


ありがとう


「あ、もしもし


今だいじょうぶ?」


「あ、うん


大丈夫だけど」


「その…謝りたくて


ごめんなさい!」


「うん?どうしたの?」


彼は謝罪される覚えがないという感じだ


「さっき自分の言いたいことだけ


言い切って、


あなたの話


なんにも考えずに


断っちゃったの」


「あ、そうなんだ(笑)」


どうやら怒ってはいない様子


「うん、三連休の話


仕事で無理だって


断ったって言ったら


めっちゃ怒られた…」


「え、だれに?」


「…両親」


「そうなんだ」


「うん


"来てくれるって言ってるのに


断る奴があるかー!"って」


「あはは(笑)」


笑ってる


まだギリギリセーフ…


だったのかな


「それでね


その話なんだけど」


「うん」


「どうしても仕事休めないの


だから一緒にいる時間


少なくなっちゃうと思う」


「うん」


「でも、それでも良かったら


ぜひ来てください」


来てくれるかな


これでダメだったら


自分のせいだしね


彼は何も悪くない


「うん、じゃあ…


お邪魔しようかな」


本当に?


やった、良かった!


「うん!」


ふたりの絆は


壊れてない


「到着時間はまた連絡するね」


彼が明るい声で言う


ああ、そうか


彼は本当に来たかったんだ


それをわたしは…


「はーい


じゃあ、またね


おやすみ」


…ほーんと


無神経だ


「おやすみ」


今度彼に会ったときには


最大限のお礼をしよう


わたしは居間に降りて


テレビを観ている二人に言った


「三連休、来てくれるって!」


両親は笑顔で


「良かったね」


と言ってくれた


あとはもう1つ


言わなければいけない事がある


「お父さん、お母さん


気付かせてくれて


ありがとう」


両親はいつも私のことを


大切に思って導いてくれる


本当に頭が上がらない


お陰で人として


彼女として


一歩前に進めたんだ


色々疲れたけど


良く眠れそうだ


良い人に巡り合ったな


わたし


これからは彼のことを


もっと大事にしていかなきゃ


そして布団の中で


一人反省会をする


今日の私は自己中だった


自分のことだけ考えて


親に言われなきゃ


大事なものを


大事な人を


失うところだった


新幹線で片道4時間の距離


決して近くはない


でも心の距離は


いつも近くに居たい


仕事に熱中しすぎて


彼のことが見えなくなっていた


さっきの言い方で


良かったのかな?


ふとそんな疑問が浮かんだ


彼に言った言葉は


ちゃんと私の言葉だった?


…ううん、違う


あれは


…お母さんの言葉


お父さんに言われて


しょうがなくオーケーしたんだと


受け取られたかもしれない


(こっちに来たいって言ってるのに


断るとは何事だ)


まるで私よりも両親が


彼を心待ちにしているかのように


聞こえるじゃない


聞こえるよね?


事実ふたりとも


楽しみにしているのは


間違いないけど


…でも


わたしの方が気持ちは上だもん!


このままじゃダメだ


私の言葉で


会いたい気持ちを伝えなきゃ


でも、どうしよう


時間はもう電話するには遅いし


明日朝一で電話する?


ううん、きっと


今の気持ちが薄れちゃう


言葉にしても


上手くまとまらなそうだった


逃げているようだけど


確実に伝える方法にした


メール画面を開いて


文字を打ち始める


『 一晩考えました。


昨晩のわたしは


最低の自己中でした。


両親に言われて


仕方なくオーケーしたように


思わせたかも知れません。


会いたいって伝える事が


どれだけ勇気のいることか。


あなたの勇気を


易々と踏みにじりました。


本当にごめんなさい。


反省しています。


会いたいって言ってくれて


嬉しかった。


ありがとう。


会えるのを心から


楽しみにしています。』


こんな言葉すら


彼の前では出なくなる


頭がホワイトアウトする


メール打ってる間は


嫌いになりませんように


嫌いになりませんように


って願掛けしながら


打っている自分がいる


あーわたし


彼のことがこんなにも


好きなんだ


送信予約をして


眠りについた


早く朝、来ないかな


翌朝


「おはよう」


いつもと変わらず


挨拶をする


メールは既に


送信済みになっていた


「おはよう」


返事が来た


メールはもう読んだのかな?


なんか


胸の中がスッキリしなくて


モヤモヤする


がんばれわたし


小さな握りこぶし

小さな握りこぶし5-4

さーてと


すべき事をやり切った


わたしは


居間に降りていき


冷蔵庫から冷えた牛乳を


グラスに注いだ


「彼、なんだって?」


台所の片付けをしていた


母がおもむろに聞いてきた


「え?うん


三連休空いてるか聞かれたけど


仕事繁忙期だし断った」


母は目を丸くした


「そう」


なんか変な感じだったけど


あまり気にしなかった


それを聞いていたらしい父が


口を開く


「半日くらい


休み取れないの?」


わたしは遊ぶなら


仕事のある日は


避けたい人だった


だって仕事のこと考えて


ゆっくり出来ないのは嫌だし


「うーん


だってその内


一緒に住むことになるんだし」


返事に悩んでいると


父がいきなり


ブチ切れた


「お前は冷血動物だな!


そんなに仕事が大事なら


付き合いも結婚も


辞めちまえ!」


侮蔑の目を向けて


怒鳴ったかと思うと


どこかに行ってしまった


はぁ?


何キレてるんだか


意味わからんけど


「何でいきなりキレるの


ワケわからんし」


普段は愛情深い人だが


一時の感情で怒鳴る事が


ままあった


短気はまだ我慢できるとしても


父の言葉の汚さには


正直吐き気がする


自分が好きな人が


汚い言葉を使うことに


私は耐えられない


胸に槍を突き立てられたような


痛みと悪寒が走る


悲しくて泣けてくる


ことばは


強い影響力を持つものだと


いつも思うが故に


好きな人には


相手を傷つける言葉は使って欲しくなかった


母が口を開く


「たぶん


お父さんが言いたかったのは


仕事が忙しくても


時間を作って


ふたりの時間を持つべきだって


事だと思うよ」


だってさ


そのうち一緒に住むのに


そう


3ヶ月後には


彼と同居する事になっている


だから


今は頼ってくれる職場や


子供たちに報いたいと


思うのは


そんなに身勝手なことだろうか


「だって遊ぶなら


1日遊びたいじゃん


仕事だって


おいそれと休めないし」


何が悪いのかわからない


「そうだね


それならそれで


もっと他に言い方なかったか


考えてみて」


母が言う


え、言い方?


なにか悪い言い方をしたのだろうか


「さっきのあなたの言い方だと


理由はどうあれ


相手よりも仕事優先で


ここには来て欲しくないように


感じちゃうかもしれないね」


仕事優先なのは


確かだけど


来て欲しくないわけがない


ただ


数ヵ月後には


ひとつ屋根の下に暮らすのに


今遠い距離を


来る必要があるのか


疑問だった


「うん


確かにそうかもしれない


でも、やっぱり仕事の日は


遊びたくない」


せっかく来てくれるのに


彼をほっぽって


仕事にいけと?


その方がよっぽど酷だ


「例えば彼に選択肢を


あげてみるのはどう?


仕事が忙しいけど


もしあなたが良ければ


仕事の合間なら時間取れるから


逢いに来てって」


なるほど、そっか


「そうしたら


彼にも選択の余地があるし


あなたの気持ちも


変な伝わり方は


しないと思うよ」


さすが人生の先輩


そうだよね


何やってんだろ私


逢いに来たいって言ってるのに


仕事だからとか


本当に最低だ


逆の立場なら


今頃マジで振られたって


本泣きしてるところだ


「そう言ってくれたら


分かる」


今になって父がキレた理由が


わかった


キレた時の父の発言は


母の通訳なしには理解できない


30年越しの付き合いは


伊達じゃない


「お父さんに謝ってくる」


父は湯船に浸かっていた


こういう時は切り出しづらい


でも覚悟を決める


「お父さん


さっきは…ごめんなさい


わたし何にも考えてなかった


お母さんに言われて


やっとわかった


でも、あの言い方は


傷ついたよ」


ドア越しに父が言う


「普通に考えたら


わかることでしょう」


普通って何?


「わかんないよ!


今まで付き合ったことないし


友達の結婚式も仕事休んでまで


出たことないし


こんな経験ないんだよ!」


今まで父に対して


これほど強気に


反論したことは無かった


小さい頃から


恐ろしい存在で


家の中しか逃げ場がないわたしは


主張するより受け入れた


今になって反論できたのは


たぶん彼の所という


逃げ場所がひとつ増えたから


かもしれない


「それにあんな言い方されて


もしお母さんいなかったら


一生わかんなかったよ!」


謝りに来たのに


今まで溜まっていたものが


あり過ぎて止まらない


少しあって父が口を開く


「そうか


父さんの言い方が悪かった


ごめん」


いつも自分の非を認めない父が


謝った


「でもな


これから先


長く一緒にいるかもしれない相手は


大切に大切に


しないといけないんだよ」


話す父は諭すようだった


「父さんもこんな性格だから


お母さんとは沢山ぶつかったし


喧嘩もした」


うん


「だけどそれでも


一緒に連れ添って


頑張ってこれたのは


お互いを大切にしてきたからなんだよ」


うん


「夫婦なんて脆いもので


ちょっとの事で壊れちまう


そんでもって


一度壊れたら


もう直らないことが


ほとんどなんだよ」


…うん


「だからこそ


お互いをよく知るために使う時間は


何ものにも替えられないんだ


時間の長さは関係ないんだ」


目頭が熱くなる


涙がとめどなく溢れる


「彼を大切にすれば


彼もあなたを大切にする


ふたりの絆を


仕事なんぞで絶やしては


いけないんだよ」


すっごく私のこと


考えてくれてたんだ…


「遊びじゃなくて


何か彼に惹かれるものが


あったんだろう?」


「…うん」


なんとか声を絞り出す


「だったら何を差し置いても


彼を優先して大事にしなさい


そうすれば彼も


あなたに応えてくれるから


それだけわかって欲しかった」


うう…


わたし最低だ


自分のことばっか考えて


彼のこと何も考えてなかった


「ありがとう、お父さん


彼に電話…してくる!」


急いで階段を掛け登って


携帯を手に取った


小さな握りこぶし