小さな握りこぶし25
「へえ、雪国?どうして?」
彼女は不思議そうに
目をこちらに向ける
「うん、彼と一緒に住むの」
「結婚するの!?」
歳も歳だし
結婚の字が浮かぶのは
おかしくないのかもしれない
でも
初カレ初カノのときめきを
もっと感じていたかった
不安定で確約がない
まっさらな恋心
喜びあったり
喧嘩したり
切なくなったり
そんな一切の感情が
わたしには愛おしいものだった
「結婚はまだなんだけどね」
「そうなんだ
でも、おめでとう!」
結婚を前提にお付き合い
している訳だが
"結婚"という言葉を
まだ直視出来ずに
カレカノでいたいと思うのは
臆病風に吹かれているからだろうか
自分でも分からないでいた
小さな握りこぶし