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小さな握りこぶし14-3(回想編)

彼のお母さんに迎えに来てもらい


アパートに着いたのは


夜の11時をまわった頃だった


久しぶりにアルコールが入ったわたしは


眠りに落ちる寸前であった


「お母さん


夜遅くにお手数お掛けしました


ありがとうございました」


「いいえ


楽しんだのなら良かったわ」


お母さんには頭が上がらない


「じゃあ、明日の晩に


お待ちしてますね」


明日は大晦日で


彼の実家でご馳走になる予定


「はい、楽しみにしてます!


それじゃあ、おやすみなさい」


お母さんと別れて


家に入る


もう布団にダイブしたい


「疲れた?」


彼が尋ねる


「うん、もう眠い」


わたしは素直に答える


「あ、布団


これ使って」


差し出されたのは


まだ未開封の布団セットだった


「え、これ新しいじゃん


開けちゃっていいの?」


いくら何でも


真新しい布団は


申し訳なくて抵抗がある


「あ、全然だいじょうぶ


むしろ君のために


揃えてくれたから」


マジか


嬉しいけど申し訳ない


「あ、そうなんだ


じゃあ、遠慮なく


使わせて頂きます」


布団を敷くと


パジャマを持って


洗面所に着替えに行く


歯磨きして準備万端


とくに緊張もせず


意外と図太い神経の持ち主だった


彼はこたつに入って


テレビを見ていた


「先に寝るね


今日はありがとう


おやすみなさい」


もう眠気に耐えられなかった


「うん、おやすみ」


意識が遠のく中で


彼が私の横を通って


布団を敷いているようだった


部屋の明かりが消えた


しかしまだ


テレビの明かりが煌々としていた


音は次第に小さくなっていく


優しいな…


これが昨日の夜


最後の記憶


もしかしたら


何か話したかったのかも


しれない


でも何も言わずに


寝かせてくれた


しかも部屋の明かりと


テレビの音まで気にかけて


その優しさが


とても嬉しかった


翌朝


ふと目を覚ますと


朝日が差し込んでいた


時計の針は


8時40分を指している


横目で彼を確認すると


スヤスヤ寝息を立てていた


もうちょっと寝よう


再び眠りにつく


浅い眠りだ


彼より先に起きていいものか


悩んでいた


なかなか彼は


起きそうになかった


仕方なく布団をでて


顔を洗いにいく


9時30分


これ以上寝て過ごしたら


勿体ない


磨き終わって戻ると


彼が布団をたたんでいた


「おはよう」


なんだ、起きてたのか


彼もまたタイミングを


見計らっていたのか


私の足音で目覚めたのか


どちらにしろ


ふたりは起床した


「朝ごはんどうする?


なんも用意してないんだけど」


彼が言う


「コンビニでいいよ」


どうせ、そんなに


食欲もなかった


自分の家の外では


あまりガツガツ食べられない


変な性分だった


「うん、じゃあ行こう」


身支度を終えて


ふたりで歩く


朝のこの時間だが


年末だけあって


人通りはなかった


不意に彼がつついてきた


何かと思って振り向くと


「手、繋ごうよ


せっかくだし」


照れながら言う


「うん」


彼の手はとても大きくて


冷たかった


しばらく歩くと


「ねぇ、カップル繋ぎしたい」


とまた彼


「カップル繋ぎってなに?」


「こうやって繋ぐの」


指どうしを交差させる


彼は妙に女子らしかった


これではどちらが


彼女なんだか分からない


「これ、やってみたかったんだよね」


嬉しそうに彼が言う


「そうなんだ


指、寒いんだけど…」


なんとデリカシーのない私


こんなカップルになりました


小さな握りこぶし

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