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小さな握りこぶし14(回想編)

〜回想〜


年末の仕事収めをして


身支度をしている


明日から4泊5日


彼の家にお泊まりです


本当はホテル借りるか


迷ったんだけど


お金が無い経済事情


知った仲だし


彼の実家は


お兄さんが同居中のため


彼のアパートに置いて頂くことになりました


ワクワクとドキドキ


次の日


最寄り駅まで


彼が迎えに来てくれた


「久しぶり」


彼が言う


そうだね、前回会ったのは…


先週のクリスマスイブだけどね(笑)


「うん、久しぶり


寒いねー雪だね!!」


今年は大寒波のおかげで


わたしの地元も雪が降ったけど


普段見慣れない雪に


テンションは絶好調


「ああ、うん


まだまだ沢山あるよ」


クリスマス前に買い換えたという


彼のワンボックス車に乗って


いざ出発


「取りあえず


アパートに荷物置いて


実家行こうと思うけど、どう?」


「うん、お願いします!」


昔から


運転が上手い人の車では


寝てしまう癖がある


近場では父の運転が


いちばん好き


彼の運転はどうかな?


街中は雪の壁で仕切られて


辛うじて道路と信号機だけが見えた


車が大きいせいか


振動が少なく


急カーブや急ブレーキが無いため


乗り心地が良かった


ふたりの間には


ラジオの音が流れている


わたしは多少緊張はあるものの


気まずくて話さない訳ではなく


もともと話さないタイプ


わたしが過剰に話すときは


異常にテンションが高い時


場を盛り上げたい時


間が持たない時


なので


彼といる空間は


無理せず自然体で


居られるもののようだ


よかった


彼も口下手で口数少ない


考えてる事は


あまり口に出さないタイプ


この静寂


少なくとも私は


嫌いではない


車を走らせること


30分


彼の2階建アパートに着く


「ありがとう」


「いえいえ」


少し路地を入った


閑静な場所だった


2階の突き当たりらしい


「お邪魔します」


部屋は1kロフト付き


綺麗に片付けられている


部屋に入ると


テレビ、コタツ物置棚がふたつ


最低限の家具だけあった


わたしも物が沢山あるよりは


必要最低限派である


ロフトの階段下にスペースがあったので


スーツケースを置いて


お土産を持って出かける


「だいじょうぶ?」


「うん、だいじょうぶ」


「じゃあ、行こうか」


「うん!」


彼の実家までは


片道10分程度


到着すると


彼のお父さんが


雪かきをしていた


「こんにちは!ご無沙汰してます」


まだ雪がちらついていた


「こんにちは、よく来たね」


私の夢のひとつ


雪国で雪下ろしが


今日叶うかもしれない!


テンションあがるー


実家は2階建てで


周りは畑と小さな池があった


雪で埋もれてわからないが


春になると


フキノトウやウドなど


山菜がたくさん採れるんだとか


もう最高です


家に上がると


居間に彼のお母さん


「お邪魔します!ご無沙汰してます


お母さん」


「あら、いらっしゃい


よく来たね


ありがとうね」


そう言ってお茶を出してくれた


寒さで冷えた身体に


お茶とコタツは天国です


「いただきます」


しばらく雑談する


天気の事、到着するまでの事


いろいろ話した


その都度、お父さんとお母さんは


相槌を打ってくれた


ふと窓の外を見ると


お隣さんが雪下ろしをしていた


ムズムズしてたことを切り出す


「わたし、雪下ろしがしたいです!」


「あはは(3人)」


何故か笑われた


「雪下ろしは、危ないから


あなたにはさせられないよ」


お父さんが言う


ガーン


夢砕けたり


「あ、でもお父さん


家の周りで雪かきして欲しいところ


なかった?」


お母さんの助け舟きたー!


「うんまあ、あるにはあるが」


「雪かき、やります!」


今日はこのために


おしゃれ長靴を装備してきたのだ


大きなスコップを持って


家周りの水路に


雪を落としていく


「楽しい!よいしょ、よいしょ」


「そうか(笑)」


お父さんと彼に笑われながらも


わたしは無我夢中で雪と格闘


しばらくすると


2階の窓からお母さん


「お昼食べていく?


昨日の残りのカレーで悪いけど」


一夜置いたカレーは美味いんよね!


「どうする、食べてく?」


と彼


もちろん


「いただきます!」


お母さんのカレーは


具が綺麗に一口サイズで


切り揃えられていて


真心の味がした


「ごちそうさまでした


とっても美味しかったです!」


「いいえ、お粗末さまでした」


ご飯を食べたあと


雪遊びをしに庭へ戻る


「雪だるま作ろうか」


彼が言う


「うん!」


一生懸命、雪玉を作るが


中々どうして


丸くするのが難しい


そうこうしているうちに


両手を広げたサイズまで成長した雪玉


「出来たよー」


彼のもとへ転がしていくと


既に頭ができていた


「よし、これを乗せて


あとは手、目、鼻と口だな」


彼は手先が器用


丁寧に私の作ったゴツゴツ胴体と


頭とを重ね表面を慣らしていく


大きくて太めの指が


雪に触れる度に形が整えられていく


まるで女の人の滑らかな手


このギャップが不思議でまだ慣れない


周りに落ちていた


木の枝と木の実で手、目と口を作った


あとは鼻だけだが


そこへお母さん登場


「これね、カラスの餌なんだけど


良かったら使う?」


萎びたおかきやお煎餅だった


「うん、貰う


ありがとう、お母さん!」


わたしはその中から


狐色づいたおかきを


鼻の位置へ押し当てた


「できた!」


特大の雪だるま完成


「まぁ、もしかしたら


鼻だけ食べられちゃうかもだけど(笑)」


たしかに


できたらちょっと疲れた


雪の上に仰向けになる


両手両足を拡げても


まだまだ場所があった


目を閉じて


耳をすませる


雪が降る音


枝がしなる音


今まで聞いたことがない


自然の音が


たくさん聞こえた


とても耳に心地よかった


小さな握りこぶし

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