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小さな握りこぶし51

翌朝


いつものように食卓を囲む


お父さんも


お母さんも


いつも通り


わたしもいつも通りの


…筈だった


お父さんが彼に


朝刊の話題を振っていた


話し好きのお父さん


聞き役のお母さん


ああ


この団らんとも


しばらくお別れかぁ


…っ


そう思った瞬間


どっと涙が溢れ出た


みんなに気付かれないように


さっと洗面台へ急ぐ


涙が…


涙が止まらなかった


とめどなく流れ出て


何も考えられなかった


戻らないと


変に思われると思い


必死に涙をこらえた


落ち着いて


食卓へ向かう


やはりいつも通りの光景


その光景を見て


また涙があふれる


「う、うう…っ」


嗚咽を必死に


バスタオルで隠しながら


涙が枯れるのを待つ


もはや


食卓へ戻ることは


かなわなかった


(本当に、今日で最後なんだ…)


なんでか


お父さんのうるさい話も


お母さんの私の名前を呼ぶ声も


全てが"今日で終わり"だと思うと


ただひたすらに


涙だけが流れ出でた


こんなに悲しいとは


この日が来るまで


想像だにしなかった


ドイツへ行くと言った時も


都会へ行くと言って家を出た時も


涙は出なかったのに


気持ちが整理できないでいると


「どうしたの?」


お母さんが洗面所へ入ってきた


お母さんの顔を見るなり


押さえ込んでいた


色々なものが


嗚咽と一緒に


押し寄せた


小さな握りこぶし

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