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小さな握りこぶし47

空っぽの檻を横目に


まっすぐキリンの檻を目指す


その手前の象の檻まで来た


「象見てく?」


彼が尋ねる


いや、見たいのは山々だけど…


「ううん、止まったら動かないから


キリン行く!」


ということで


象の檻を迂回した


そして、しばらく行くと


とうとうキリンの標識が目に入った


眼前にキリンの野外檻があり


ふたりで駆け寄る


ところが見渡せど


檻の中には


鹿とダチョウしかいない


「あれ?外には居ないねー


屋内入っちゃったのかな」


キリンの部屋という場所を見つけ


入ってみる


居た


大きい目と長いまつ毛


キリンさんは食事中だった


「おおーキリンだ」


わたしは久々に見るキリンに


見入っていた


こんなに大きかっただろうか


記憶にあるキリンは


小学生の時に見た


ひたすら全てが長い生き物だった


すらっと伸びた四肢


ちょこんと乗った胴から


どこまでも伸びる首


頭なんて


お飾り程度に付いている認識だった


改めて見ると


とても優しい目をしていた


念願叶った彼はというと


偶然にも自分と同名であった


キリンの雄をマジマジと


見つめていた


かと思うと


「蜘蛛の巣すごい」


いきなり何を言い出すかと思えば


「キリン見てたんじゃないの?(笑)」


「いやぁ、気になって(笑)」


これだからA型は面倒臭い


(※A型のみなさま、ごめんなさい)


しばらく見入っていると


「もういいや、ありがとう」


彼が言う


「もう満足?」


「うん、満足」


さて、閉園まであと


30分


「象見に行こっか」


待ってましたー


「いいの?やった!」


ということで


テンションをあげて


象の檻まで引き返す


小さな握りこぶし

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