恋愛&小説のブログ

閲覧して頂きありがとうございます!励みになります(ㅅ˘˘)♡*.+゜

小さな握りこぶし3

大晦日、彼の実家にて


食卓には大きなカニ鍋


色とりどりのお寿司に


旬のゼンマイと焼きジャケ


極めつけは


彼のお母さん手作りの


おせち料理が回転皿に


綺麗に盛り付けられていた


この辺りの風習で


大晦日には一人1尾


焼きジャケを食べるのだとか


実は彼の実家は


初めてでは無かった


仕事納めをした翌日から


彼のところに来ていて


昨日のお昼ご飯を


ご馳走になっていた


「夕食の残りでごめんねぇ


カレーライスで良ければ


食べる?」


お母さんのカレーライス


具材が少しとろけ出していて


私好みのシンプルな味付けだった


チャコという猫マダムが


私の家に何用かと


尋ねんばかりに


遠くからこちらを観察していた


彼に一番懐いているらしく


呼ばれれば


その重たい体を持ち上げて


彼の膝に滑り込む


大晦日のお笑い番組が


BGMの役割を担っている中


お母さんと私は意気投合し


話の合間に寡黙なお父さんと


お父さん似の彼が参加する


チャコはおこた(コタツ)の


指定席で寝転んでいる


女がワイワイ、男が静かな


似たもの同士の取り合わせ


宴もたけなわ


大晦日のお参りなんて


生まれてこの方


してこなかった私の


本当の初詣


雪がパラパラ舞う中


二人でひとつの傘をさし


近くの神社に初詣


境内に赤々と燃える炎は


静けさの中で激しく


その熱を私の全身に行き渡らせた


「あけましておめでとう」


最初に言った、言われたのが


彼だなんて


幸せで胸がいっぱいになった


帰り道


来た道を戻りながら


彼がふと口を開く


「言うの恥ずかしいんだけど…」


「うん?」


「俺、きみのことが好きです」


「…(赤面//)


…ありがとう」


私も、って言えなかった


彼の勇気は


私も、なんて言葉では


到底イコールになんて


なり得ないくらい


すっごい勇気だった


そんな彼に最大限


私が返せる言葉は


"感謝"以外に思いつかなかった


人に直接気持ちを伝えるのは


とても大切なんだと


教わった瞬間でもあった


これ程までに彼の言葉で


胸が締め付けられる事が


言葉が出なくなることが


愛おしいと思うなんて


息をしているはずなのに


息苦しい


頬は熱を帯びて


頭の中ではまだ


彼の言葉が反響する


その言葉しか世界に


存在していないかのように


空っぽの頭を駆け回っていく


手紙やメールじゃ


とても伝えられない


だって勿体ないもの


この一瞬のときめきは


彼が勇気を振り絞って


届けてくれた大切な


"生きた"言葉なのだから


私もこのお返しを


自分の"生きた"言葉で


伝えたい


不器用でいい


ありのままの想いを


言葉に乗せて届けよう


小さな握りこぶし

×

非ログインユーザーとして返信する