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小さな握りこぶし4(告白編)

会場のセッティング待ち


控え室はもちろん男女別


各々のフリータイムを終えた


ライバル達が反省会をしている


(どうしよう…緊張するねぇ)


(私たぶんダメだと思う…)


(もっと話しておけば良かったなぁ)


(大丈夫だよ、自信もって!)


それぞれの想いを胸に秘め


つかの間の休息


数人、仲良くなった子が


話しかけて来てくれた


「どうだった?最後のフリータイム」


一番気の合った子


お見合いが始まってからは


休憩時間ほとんど一緒にいた


「うん。


ちゃんと話せたよ


独占しちゃった」


結果がわかっている安心感と


カンニングしたような後ろめたさと


どっちもあった


「良いなぁ


雰囲気いい感じだったもんね


わたしはマジで自信ない。」


落ち込む彼女に


「最後までどうなるか分かんないし


もしかしたら、雰囲気


合わせてくれただけかも…」


そう言いながら私の中の不安は


まだ消えずに膨れ始める


彼を信じた私を信じろ


ここまで来て


不安に押しつぶされそうになる


昔から夢中になっている間は


何者にも負ける気がしなかったが


一度緊張の糸が解けると


大きな不安に襲われた


いつものポジティブは消え


安心出来る誰か


安心出来る何かが無いと


どんどん底なし沼に沈んでいく


今はわたしの直感と


彼の言葉しか頼るものがなく


彼を知った気でいた私は


その奢りを恥じた


彼の言葉を繰り返す


「俺は応えたい


俺は応えたい…」


言葉はなんて無力なんだろう


あの時の安心感は


彼がいて、彼が心から言ったことで


得られたものなのだ


今わたしが思い出して


同じ場面を想像しても


なんの安心感も得られなかった


言葉だけじゃなく


彼がいないと


彼が言ってくれないと


ダメなんだ


胸がギューッと締め付けられる


私の思考は


もはや彼無しには機能しなかった


ピーー


いよいよその時がきた


私は彼を目で追いながら


心臓が飛び出しそうだった


すると真剣な眼差しの彼が


こちらへ向かって歩いてきた


コツコツコツ


静寂の世界に


彼の革靴の音だけが


響いていた


コツコツコツ…


私の前に彼の姿があった


この瞬間を妄想しすぎて


夢でも見ているんだろうか


「今日はありがとうございました。」


現実に戻る…ほんとうだ


夢じゃない


夢じゃ…ないんだ


「…


俺の君に対する想いは


何にも負けません


よろしくお願いします」


「はい


よろしくお願いします」


なんだろうこの気持ち


言葉にできない想いが


目から溢れだしてくる


わたし


彼氏が出来たんだ


しかも好きな人に


告白してもらったんだ


嬉しいよ


口の中カラカラだし


もうこれ以上ないくらい


幸せ者だ


本当にほんとうだよね


「…手


繋いでいい?」


彼が恥ずかしそうに


きいてくる


「うん」


ふたりの手が


ぎこち無く重なり合った


歩いて会場の外に出る


朝降っていた雨が


本降りの雪に変わっていた


「頑張ったね」


二人きりになって声を掛けた


「緊張したぁ


俺ちゃんと言えてた?」


無垢な笑顔が覗いた


「うん、言えてたよ


すっごくカッコよかったし


…嬉しかった」


「あ、ああ」


「ありがとう


私を選んでくれて」


緊張がとけて


自然と笑顔になった


「こちらこそ、ありがとう


俺を選んでくれて」


胸の鼓動が速くなる


もう不安はどこかへ行ってしまった


彼が居てくれれば


他に何も望まない


握られたふたりの手は


お互いの熱を帯びて


雪の中でも温かかった


連絡先を交換して


会場に戻った


どのくらいの時間


外に居たのだろう


告白タイムは終了し


何組かカップルが出来ていた


私の友達も見事に


カップリングしており


笑顔で振る手からは


幸せが溢れだしていた


会場をあとにすると


帰りの時間が迫っていた


翌朝仕事のわたしは


サヨナラもろくに言えず


急いで駅に向かい


雪国を後にした


帰りの車内


メールが届く


彼からだ


「今日は本当にありがとう


帰り道乗り換えとか


大変だと思うけど


気をつけてね」


素朴だけど


思いやりがあって


良いなぁって


しみじみ思いながら


「こちらこそ、


ありがとうございました


うん、気をつけるね


これから


どうぞよろしくお願いします」


安心したせいか


ぐったりした私は


爆睡するのであった


今日はほんとうにマジで


疲れたよーー


でも、勇気出して良かった


ありがとう


あの時の自分


おめでとう


今の自分


これから一歩一歩


ふたりの間を埋めていこう


出し切ったふたりに


小さな握りこぶし

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